資金調達

投資契約のチェックポイント~公表条項~

投資契約のチェックポイント~公表条項~
目次

1.  公表条項

スタートアップやベンチャー企業が投資家からの出資を受けた場合に、出資を受けた事実やその金額について自社のHPなどでプレスリリースを公表することがあります。

このプレスリリースはどのような目的があるのでしょうか。

2. 資金調達を実施したことを公表する目的

(1) 取引先からの信用の確保

投資家から資金調達に成功したということは、少なくとも投資を実行した投資家からは成長性がある企業として判断されたということになります。特にベンチャー企業は創業間もない時期にはプロダクト自体が完成していなかったり、完成していても会社自体や経営陣の信用が不足しがちなため取引が成立しにくい傾向にあります。そういった状況下では、投資家から出資を得ていることで将来性があることを示し、取引先(候補)からの信用を確保につながることがあります。

(2) 採用候補者へのアピール

特に創業期のスタートアップの財務基盤が脆弱であることが多いです。それは具体的な財務諸表を見ずともある程度察しがついてしまうものです。そのため、採用募集をかけても採用候補者が給料の未払いや倒産リスクを懸念して、応募を控えたり内定を辞退してしまうことがあります。そのような状況下においては、投資家からの出資金額を公表することで、一定のキャッシュが会社の銀行口座に入っていることを示すことが出来ます。長期間ではないにせよ、一定の期間の事業運営に必要な資金が確保されていることを明らかにし、採用候補者の上記懸念を軽減する効果が期待できます。

(3) 他の投資家の信頼の獲得

投資家にとって、投資を検討しているスタートアップ企業の株主は投資実行時の一つのチェックポイントになっています。既に事前に有名な企業やベンチャーキャピタルが出資しているということは、一定の水準のDD(デューデリジェンス)が行われた上で成長性があると判断されていることになります。そのため、後続の投資家にとっては安心材料の一つになります。

3.  公表条項の条項例

公表にあたっては一定の条件が付されることもありますが、オーソドックスな定めは以下のとおりです。な

発行会社は、本契約(※)締結の事実及びその内容について公表する場合には、公表内容について事前に投資家の承諾を得るものとする。                              

4.  公表に関する留意事項

投資実行の事実に関する公表を望まない投資家もいるため、投資家との関係性を維持するためにも、公表条項の有無にかかわらず、公表を行う場合には事前に投資家と協議することは望ましいでしょう。


TECH GOAT PARTENRS法律事務所では、主に発行会社からのご依頼を受け、投資契約、株主間契約、分配合意書等のレビューを行っています。初めてエクイティファイナンスを実施するスタートアップ/ベンチャー企業様については、エクイティファイナンスの概念自体からご説明しますので、安心してご相談ください。