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【弁護士執筆】従業員に対する貸与品(PC・スマホ)の支給に関するルールを解説!

【弁護士執筆】従業員に対する貸与品(PC・スマホ)の支給に関するルールを解説!
目次

1. 従業員に対する貸与品の支給

会社が従業員に対して業務に使用するPCやスマートフォンを貸与することは一般的に行われています。

貸与する目的は、業務に関連して取り扱う情報をセキュリティ上安全な端末からアクセスさせることにあります。セキュリティ対策が不十分な私用のPCやスマートフォンからアクセスさせることウイルス感染の恐れがあるので注意が必要です。

2. 貸与品の支給に関するルール

(1) 貸与品の支給に関するルールの定め方

PCやスマートフォンを貸与する場合には、その貸与品の取り扱いを定めるルールを作成して従業員に遵守させる必要があります。

遵守させる方法としては下記の方法が考えられます。

  • ①就業規則の中に貸与品に関する規定を盛り込む方法
  • ②「貸与品規程」を別途作成する方法
  • ③貸与品の取扱いに関する誓約書に従業員からのサインを取得する方法

(2) 貸与品の支給に関するルールの具体的な内容

貸与品の取扱いに関して具体的にどのようなルールを定める必要があるのでしょうか。貸与品といってもPC、スマートフォン、ipad等様々なものが考えられるので、一旦、多くの会社で貸与されるであろうPCとスマートフォンに限定して考えていきます。また、上記の③の方法を前提にして考えます。

① 貸与品の特定

まずは、貸与品を具体的に特定するために必要な情報を記載しましょう。PCやスマートフォンであれば、型番がありますので、それらを記載するのが良いでしょう。また、同一の型番の電子機器を複数人に貸与することも考えられるため、管理番号も記載するとなお良いです。

≪記載例≫

貸与品の情報

PC  ●●(メーカー名) ××(型番) A-01(社内の管理番号)

スマートフォン iphone15 pro MAX               A-01(社内の管理番号)

② 貸与品の取扱い方法

貸与品はあくまでも会社の資産のため、私用の物品よりも丁寧に扱ってもらう必要があります。また、電子機器は壊れやすいため、外出先に持ち出しを可能とする場合には専用のケースに入れることを必須にした方が良いです。

③ 貸与品の破損・紛失時の報告

貸与品が破損・紛失したような場合には直ちに管理部に報告させる必要があります。特に、紛失した場合には、社内で管理されている情報(社内の機密情報やクライアントに関する情報等)が外部に流出する可能性があるため早急な対応が必要です。紛失した場合の連絡先を指定するようにしましょう。

④ 貸与品の返還義務

貸与品は、従業員が退職する場合や業務上不必要になった場合には返還させる必要があるため、返還時のルールについても忘れずに定めましょう。なお、リモートワークを許容している会社の場合、郵送にて返却させることがあると思いますが、精密機器なので郵送中に破損しないよう、梱包の仕方には十分注意させる必要があります。梱包の仕方も含めて返還方法は具体的に指示した方が良いです。

⑤ 貸与品内のデータの確認権限

社内・社外へのハラスメントや取引先との不正な取引等の不祥事があった場合には、そのやり取りを確認するために、スマートフォンやPC等の貸与品内(会社付与のアカウントも含みます)のデータを直ちに確認する必要があります。

そのため、会社が必要と判断した場合には、貸与品内のデータについて合理的な範囲で調査することが出来る権限を定めておく必要があります。また、従業員が任意のパスワードを設定しているような場合には、そのパスワードを開示させる権限も併せて定めておきましょう。なお、私用のスマートフォンやPCを業務に利用させている場合には、このような不祥事に関する調査の際に、従業員が非協力的な態度を取った場合には証拠収集に支障が生じる可能性がある点に注意が必要です。

⑥ 貸与品へのアプリケーションのダウンロード

従業員が業務上必要となるアプリケーションを貸与品にダウンロードする必要がある場合には、セキュリティ上安全なアプリケーションに限定するようにしましょう。ダウンロード可能なアプリケーションを制限したり、アプリケーションのダウンロード時には情報セキュリティ部門の事前承認を取得するフローを組むなどするのが有効です。

TECH GOAT PARTNERS法律事務所では、就業規則の作成や貸与品の支給に関する誓約書の作成を行っています。就業規則等の見直しをされたい企業様や貸与品の支給に関する誓約書の作成をされたい企業様はこちらからお気軽にご相談ください。