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【弁護士執筆】【条項サンプル有り】SNS(TikTok/Instagram/X)運用代行契約書の作成のポイント(委託者側向け)

【弁護士執筆】【条項サンプル有り】SNS(TikTok/Instagram/X)運用代行契約書の作成のポイント(委託者側向け)
目次

1 SNSの運用代行とは

自社のPRのためにSNSを活用したマーケティングは近年活発に行われています。各社のSNSアカウントが日々増加しているため、自社のSNSをバズらせることも年々難易度が上がりつつあります。SNSの運用に関しては、各SNS毎の特徴を踏まえた専門的なノウハウが存在するため、外部のSNS運用代行業者にSNSの運用を委託することも増えています。本記事では、SNSの運用を委託する際の主な契約条件について解説しています。

2 SNS運用代行契約書で定めるべき条項

(1) 対象となるSNSアカウントの特定

運用対象となるSNSアカウントが一つなのか複数なのか、委託者の既存のアカウントなのか新規アカウントなのかを明記しましょう。

【条項例サンプル】

第●条(本件業務)

甲は乙に対し、以下に記載するSNSアカウントの運用代行業務を委託し、乙はこれを受託する。

SNS:X/Instagram/TikTok

アカウント名:●●

(2) 投稿内容の準備

投稿内容となるテキスト・画像・動画を委託者側で準備するのか、受託者側で制作するのかを決める必要があります。受託者側に制作を依頼する場合には、コンテンツ制作に関する一般的な契約内容を記載する必要があります。具体的には、仕様の合意、検査基準、契約不適合責任、コンテンツに関する第三者の権利の非侵害等が挙げられます。

SNSのコンテンツ制作において一般的なコンテンツ制作以上に注意が必要なものとして、炎上リスクが挙げられます。SNSでは話題になっている事項に関連したパロディ等がバズる傾向があります。そのため、インプレッションを稼ぐためにやや過激なパロディをコンテンツに組み込むことがSNS戦略上考えられます。パロディは必ずしも第三者の権利を侵害するものではないため、第三者の権利侵害とは別個に炎上し得るコンテンツ制作に関するルールを定めておくことが無難です。

(3) 投稿頻度・時間

SNSの運用戦略上、SNSの投稿日時は重要な要素となっています。したがって、投稿頻度や時間についても契約内容として合意しておくが重要です。もっとも、契約書作成時点では具体的な投稿頻度や時間を確定しきれない場合もあります。そのような場合には、別途協議する旨を記載しておくのが良いでしょう。

実務上のトラブルとして「SNS運用代行業者がSNSへの投稿時間の設定を誤り、想定外の日時にコンテンツが投稿されてしまった」というケースが存在します。このようなケースにおいて損害賠償請求を行う場合、損害の立証ハードルは高いことが多いです。というのも、想定外の日時にコンテンツが投稿されたことで生じた損害を金銭的に算定することが難しいことが多いためです。そのため、投稿日時が重要なコンテンツが存在する場合には、委託者側でも投稿日時の設定を確認するフローを組むと共に、契約書上も違約金を設定しておくのが良いでしょう。

(4) ログイン情報の取扱い

SNS運用代行業者に対してはSNSアカウントのログインID/パスワードを共有することが多いです。

万が一、ID/パスワードが漏えいした場合には、SNSアカウントが乗っ取りの被害に遭ったり、SNSアカウントの削除の手続(一定期間内の再度のログインで復活できることもありますが)をされてしまうことが想定されます。

ID/パスワードへは、SNS運用代行業者内でも必要な範囲に限定してアクセス可能とするようにしましょう。

【条項サンプル】

第●条(SNSアカウントのID及びパスワード)

乙は、SNSアカウントのID及びパスワードを善良なる管理者の注意をもって保管及び管理するものとし、本件業務の遂行目的以外に利用してはならない。また、SNSアカウントのID及びパスワードは、本件業務の遂行上必要な範囲の者のみがアクセス可能な場所に保存するものとする。

(5)KPIとインセンティブ

SNSアカウントの運用においては、投稿数/フォロワー数/再生回数/CV等をKPIとして設定することが考えられます。KPIとインセンティブを適切に組み合わせることで、SNS運用代行業者のコミットメントの向上も期待でき、早期にSNSアカウントの運用目的が達成できることも考えられます。

インセンティブを付与する場合には内容を明確にし、KPI達成時に紛争が生じないように注意しましょう。

3 SNSの運用に関連する紛争

SNSの運用においてフォロワー数等をKPIとしてインセンティブを付与する場合には、フォロワー数等を購入してKPIを達成するなどの不正が発生する可能性があることを念頭に置きましょう。契約書において禁止事項として明記すると共に、不正が行われていないか委託者側でも適宜確認することが望ましいです。不正の種類と兆候は下記を参考にしてください。

不正の種類
不正の兆候
フォロワーの購入・特定の投稿がバズる等のフォロワー数の像が原因が無いにも関わらず急激にフォロワー数が増加した
・知名度の無いSNSアカウントを新規に開設したばかりなのにフォロワーが数百名単位で存在する
インプレッションの購入・特定の投稿のみインプレッションが増加している
・インプレッションに対して、保存/リポスト等の関連の数値が低すぎる

TECH GOAT PARTENRS法律事務所では、SNSの運用を委託する事業者向けに契約書の作成や確認業務を提供しています。SNS関連のトラブルは、単純な金銭賠償の問題にとどまらず、対外的な回復困難なリピテーションリスクもはらんでいます。SNS運用の委託をお考えの事業者の皆様は、まずはこちらから無料面談をお申し込みください。

【SNS運用業務委託契約書の作成費用目安】

※顧問契約を締結いただいた場合には顧問契約の稼働時間内で対応可能です。

SNS運用代行業務委託契約書の作成15万円~30万円程度(税別)
SNS運用代行業務委託契約書の確認
※既に受託者側から一定のクオリティの契約書が提供されている場合には「作成」ではなく「確認」となります。ただし、実質的に0からの「作成」が必要と判断される場合には「作成」案件としての対応になります。
10万円~20万円程度(税別)