【弁護士執筆】カスタマーハラスメント対策-従業員の名札の氏名表示-
1 はじめに
近年、一般消費者による事業者に対する不要な要求がなされるケースが増えてきています。本記事では、カスタマーハラスメントに対する対応策のうち、従業員の名札に記載する氏名の表示に注目して解説していきます。
2 カスタマーハラスメントの定義
カスタマーハラスメントとは厚労省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では下記の通り定義されています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
※出典:「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業検討委員会 厚労省
定義に記載されているとおり、「クレーム等=カスタマーハラスメント」ではなく、社会通念上不相当なクレーム等のみがカスタマーハラスメントに該当することに留意しましょう。
例えば、飲食店において従業員が誤ってお客様に配ぜん中の飲み物をこぼしてしまったケースにおいて、ミスを注意したり、汚れた衣服のクリーニング代(一般的な費用)を請求するような行為は、事業者側のミスに対する社会通念上相当な手段・態様のクレームでありカスタマーハラスメントには該当しません。
カスタマーハラスメントに該当しないものをカスタマーハラスメントとして取り扱うことは企業に対するリピテーションを大幅に毀損するリスクがあるため注意しましょう。
3 従業員の名札の氏名表示と動画撮影
特に飲食店・雑貨屋・アパレルショップ・コンビニ等では、従業員が胸元に名札を付けていることが一般的です。
昨今、従業員に対してクレームを伝える際に、従業員の顔や名札を動画撮影してYouTube等の動画共有サイトに後日upしたり、ライブ配信するケースが目立ちます。
動画共有サイトの動画やライブ配信映像はSNSを通じて短時間で広範囲に拡散されてしまします。このような手法の適否はともかくとしても、会社としては従業員の個人情報が拡散されることで当該従業員が精神的に病んでしまうリスクや退職してしまうリスクについて注意を払う必要があります。
動画撮影そのものを物理的に止めることが難しいケースも多いため、動画撮影をされる前提で対応を考えるのが得策です。なお、動画撮影を止める際に、相手の体に無暗に触れると別のトラブル(例:「暴行をされた」といいがかりをつけられる)に発展するリスクもあります。
そこで、従業員の名札に関しては①役職名のみ記載する②イニシャルのみ記載するといった形で個人を特定する情報を出来る限り開示しない状態にすることが望ましいです。
仮に正当なクレームを受けたような場合であって責任者の連絡先を伝える必要がある場合には、別途名刺を渡す等の対応をすれば事足ります。
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