【弁護士執筆】【条文例掲載】反社会的勢力の排除に関する条項(暴排条項)の必要性と条文例
1 反社会的勢力の排除に関する条項(暴排条項)とは
反社会的勢力の排除に関する条項(暴排条項)とは、お互いに自社や自己の関係者が反社会的勢力ではないことや不当要求を行わないことなどを誓約し、その制約に違反した場合には契約を解除することが出来ることを定めた条項をいいます。
2 暴排条項を定める意味
暴排条項を定めるとどのようなメリットがあるのでしょうか。
暴排条項には主に以下のような機能があると考えられています。
- 契約締結後に反社があることが判明した場合に契約解除が出来る
- 暴排条項の存在によって自社や関係者が反社であることを隠して契約することを牽制出来る
- 対外的に反社との取引を拒絶する企業であることを示すことが出来る
3 暴排条項で定めるべき内容
(1) 暴排条項で定めるべき二つの内容
暴排条項は、①反社会的勢力に該当しないことのみを表明保証させるもの、②反社会的勢力に該当しないことに加えて、不当要求を行わないことも表明保証させるものの大きく分けると二つのパターンが存在します。
純粋に反社会的勢力との取引関係を遮断するという意味では①で十分のように思われます。
もっとも、実際には、反社会的勢力に該当することの証明は容易ではありません。そのため、①のパターンでは、相手方の言動から反社会的勢力であることが疑われる場合に、暴排条項のみを理由として契約解除をすることが出来ないという問題が発生します。
一方で、反社会的勢力やそれに類する属性の者であることが疑われる場合には、暴力的な言動や不当要求が散見されることも珍しくありません。そこで、反社会的勢力であることの立証が難しい場合であっても、暴力的な言動や不当要求を理由に契約解除が出来る内容にしておく方が望ましいです。
以上のとおり、暴排条項では、①反社会的勢力に該当しないことに加え、②暴力的な言動や不当要求などを行わないことを誓約させる内容を盛り込むことが重要です。
(2) 反社会的勢力ではないことを保証させる範囲
相対契約において、特定の事項について表明保証を行う場合、その表明保証を行う対象は契約当事者に関連する事項に限定することが一般的です。契約当事者以外の事項については、契約当事者は把握したりコントロールすることが出来ないためです。
もっとも、相手方の関係会社などのグループ会社に反社会的勢力が含まれている場合には、相手方を経由して反社会的勢力と取引することになりかねないため、グループ会社についても表明保証の範囲に含めた方が良いです。
また、グループ会社等の資本関係にある者だけではなく、多額の金銭の貸し付け・人員の派遣・特定の取引等を通じて相手方を実質的に支配している者についても、その範囲に含めることが必要な場合があります。というのも、意図的に資本関係を持たずに、会社を実質的にコントロールしようとする者が存在するためです。
反社会的勢力ではないことの表明保証の範囲は各取引や相手方との属性によっても変わり得るため、デフォルトとしては広めの範囲としつつも、個別の取引ごとに微調整出来ると望ましいです。
4 暴排条項の記載例
暴排条項にはいくつかのバリエーションが存在します。
例えば、下記のような条項例が考えられます。
第●条(反社会的勢力の排除等)
1. 甲及び乙は、相手方に対し、本契約締結日において、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等その他これらに準ずる者(以下総称して「暴力団員等」という)に該当しないこと及び以下の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたって該当しないことを確約する。
(1) 暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有すること
(2) 暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
(3) 不当に暴力団員等を利用していると認められる関係を有すること
(4) 暴力団員等に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
(5) 自己の役員または経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること
2. 甲及び乙は、相手方に対し、自らまたは第三者を利用して以下の各号のいずれかに該当する行為を行わないことを確約する。
(1) 脅迫的な言動または暴力的な要求行為
(2) 法的な責任を超えた不当な要求行為
(3) 風説を流布し、偽計を用いまたは威力を用いて相手方の信用を毀損し、または相手方の業務を妨害する行為
(4) その他前各号に準ずる行為
3. 甲及び乙は、相手方が前二項に違反した場合には、直ちに本契約の全部または一部を解除し、かつ、これにより自己に生じた損害の賠償を請求することができる。この場合、相手方は、当該解除により自己に生じた損害の賠償を請求することはできない。
一般に公開されている暴排条項のひな形としては下記が参考になります。
【参考文献】
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