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闇バイトと職業安定法

闇バイトと職業安定法
目次

1 闇バイト

(1) 闇バイトとは

近年、SNSを通じてオレオレ詐欺(特殊詐欺)の受け子・かけ子、窃盗、強盗、違法薬物の運搬などの実行役の募集がされています。このような違法行為によって報酬を稼ぐ仕事のことを「闇バイト」と呼びます。

(2) 闇バイトという呼称の適否

「闇バイト」という言葉からはあたかもアルバイトの一種であるようにも思えますが、実際は単なる犯罪の実行役の募集に過ぎません。

「闇バイト」の募集に応募してしまうのが、社会的な経験が浅い若年層が多い実情があります。若年層からすれば「バイト」という言葉が使用されていることで、「アルバイト」の一種であると誤解してしまう可能性は十分に考えられます。「アルバイト」だとは思わなくても、「犯罪」より少し軽いもののように思ってしまう可能性もあります。いずれにせよ、「闇バイト」が「犯罪の実行役の募集」であることがぱっと見でわかるような呼称に変更することが望まれます。

2 職業安定法違反

(1) 職業安定法違反による逮捕報道

闇バイトの募集行為について、2023年に全国初の事例として職業安定法違反による逮捕事例が報道されました。

・2023年9月 SNSを通じて特殊詐欺の実行役を募集した者を逮捕 兵庫県警

※参考 「闇バイト募集役、職安法違反容疑で初の逮捕 兵庫県警」 2023年11月24日産経新聞

・2023年  SNS(X)を通じて特殊詐欺の実行酌を募集した者を逮捕

※参考 「SNSで闇バイト募集疑い 職安法違反、全国初逮捕 宮城」 2023年10月25日産経新聞

(2) 闇バイトと職業安定法

闇バイトの募集行為は職業安定法ではどのように規制されているのでしょうか。実際に職業安定法の規定を見てみましょう。

職業安定法第63条は以下のように定めています。

第五章 罰則
第六十三条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
一 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。
二 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。
※太字は執筆者による

職安法63条2号は、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で」「職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事」することを罰するものです。

前述のとおり、闇バイトは「犯罪の実行役」であるため、闇バイトの募集は「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」で「職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供」を行っているものといえます。

3 今後の流れ

2023年の秋頃から逮捕報道が出始めていますが、同様の募集行為はSNS上で散見されるため、同様の逮捕事例が今後も続く可能性はあります。

オレオレ詐欺等の被害を撲滅するためにも、闇バイトを通じて犯罪に関与してしまう若年層を減らすためにも、「闇バイト」に関する啓蒙活動の重要性が今後も高まっていくでしょう。

4 出張授業

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