【弁護士が執筆】訪問美容師の法律(法的問題点)を解説

【弁護士が執筆】訪問美容師の法律(法的問題点)を解説
目次

1 訪問美容師

 美容師に髪の毛を切ってもらったり、染めてもらったりするために、数か月に一度、美容室に行く人が多いと思います。

 もっとも、健康上の理由で外出が難しく美容室に行きたくてもいけない人がいます。そういった方に向けて、美容師がお客さんの自宅等を訪問するのが訪問美容師の仕事です。

2 訪問美容師と美容師法

(1)「美容」の定義

 美容師が行う「美容」とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。

美容師法第2条第1項では、「美容」とは「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」をいうとされています。

パーマについては美容師が行わなければならないことはイメージしやすいですが、結髪や化粧についても

(2)美容所以外の場所における営業の禁止

 美容師は、原則として、美容所(美容の業を行うために設けられた施設)以外において、美容の業を行ってはなりません(美容師法第7条本文)。例外的に、政令で定める特別の事情がある場合にはこの限りではないとされています(美容師法第7条ただし書き)。

 美容師法施行令第4条は、美容師法第7条ただし書きに該当する例外を以下のように定めています。

(美容所以外の場所で業務を行うことができる場合)
第四条 美容師が法第七条ただし書の規定により美容所以外の場所において業を行うことができる場合は、次のとおりとする。
一 疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者に対して美容を行う場合
二 婚礼その他の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に美容を行う場合
三 前二号のほか、都道府県(地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項の規定に基づく政令で定める市(以下「保健所を設置する市」という。)又は特別区にあつては、市又は特別区)が条例で定める場合

※出典:美容師法施行令

 例外的に美容所以外の場所で美容を行うことが出来るケースを簡単に整理すると以下のとおりとなります。

①病気等により美容所に来ることができない者に対して美容を行う場合
②結婚式等の冠婚葬祭等に参列する者に対して、その直前に美容を行う場合
③都道府県が条例で定める場合

(3)美容の業を行う場合に講ずべき措置

 美容師は、美容の業を行う時には、以下の掲げる措置を講じる必要があります(美容師法第8条)。

①皮ふに接する布片及び皮ふに接する器具を清潔に保つこと
②皮ふに接する布片を客一人ごとに取り替え、皮ふに接する器具を客一人ごとに消毒するこ
③その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置

③その他都道府県が定める衛生上必要な措置について、東京都条例では具体的な内容として以下が掲げられています。

一 白色その他汚れの目立ちやすい色の清潔な作業衣を着用すること。
二 顔面作業の際は、マスクを使用すること。
三 身体は、常に清潔に保つこと。
四 首巻き及びまくら当てに紙製品を用いる場合は、客一人ごとに廃棄すること。
五 客用の被布は、白色その他汚れの目立ちやすい色の清潔な布片を使用すること。
六 消毒済の器具は消毒済物品容器に、未消毒の器具は未消毒物品容器に収めておくこと。
七 てい毛用のカップその他客の皮膚に接しない器具で客一人ごとに汚染するものは、常に清潔に保つこと。
八 洗髪器は、常に清潔に保つこと。
九 消毒薬は、随時取り換え、常に清潔に保つこと。

※出典:東京都 美容師法施行条例

上記定めは、特に衛生面に着目したものです。衛生面は身体への影響が直接的に生じる部分であるため、コストカットを理由に衛生面を疎かにしないよう注意が必要です。

3 訪問美容師とビジネス展開

訪問美容師は、高齢化が進み自由に移動できない人や病気によって移動が困難な人にとっては非常に重要なサービスです。髪の毛が伸びることは生理現象として避けられませんし、セルフカットには誤って肌を傷つけてしまう可能性があり、現実的に美容師(または理容師)に頼まざるを得ないためです。

一方で、美容所以外での美容の業の提供は衛生面等の問題もあり、一定の制約条件下において認められているものにすぎない点を忘れてはいけません。規制の内容を熟知し、遵守した上で訪問美容師業を行いましょう。

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