従業員から退職届を提出された場合の対応

従業員から退職届を提出された場合の対応
目次

【本記事で解説している内容】

従業員が自発的に退職する場合や退職勧奨によって退職する場合には、退職届が提出されることが一般的です。

その後、業務の引継ぎや貸与品の返還等が滞りなく進めば問題ありませんが、従業員側の理由によって退職届の撤回を主張されることがあります。

本記事では、退職届の法的な性質、退職届の撤回の可否などについて解説していきます。

1 退職届のフォーマット

退職届のフォーマットは自由なので、従業員が自ら用意するものを受理して基本的には問題はありません。会社側で予め用意しておき、従業員がアクセスできるフォルダ等に格納しておいても良いでしょう。

2 退職届の法的性質

退職届の法的性質としては①辞職の意思表示と②合意退職の申出の2パターンが考えられます。

①辞職の意思表示

辞職の意思表示であれば、一方的に意思表示を行った時点でその効果が発生します。そのため、会社側の承諾が無い限り、辞職の意思表示を撤回することはできません。

②合意退職の申出

合意退職の申出の場合、会社側からの承諾の意思表示があった時点退職の効果が発生します。そのため、会社側の承諾がなされていない限り、合意退職の申出の意思表示を撤回することができます。

②と判断される場合には、会社から退職届を受理した旨の通知を行う必要があるので、従業員の退職の意思表示が①②のいずれに該当するのか慎重に判断しましょう。

3 退職届の受理通知

(1) 退職届の受理通知の方法

従業員から退職届が提出された場合には速やかに退職届を受理した旨の通知を行いましょう。受理した旨の通知は、メール、チャット、書面、PDF等のいずれでも問題ありませんが、事後的に通知の有無と内容が確認できるような形にしましょう。チャットで通知する場合には、会社で使用するチャットツール自体が変更になり、その際にやり取りが消失する可能性があります。そのため、メールや書面で行うことが望ましいです。

(2) 退職届に記載されている理由が会社の認識と異なる場合の対応

従業員から提出された退職届に記載されている退職理由が、会社の認識と異なることがあります。

例えば、会社としては本人都合による退職だと認識していたが

「会社からの退職勧奨により・・・」

「会社(上司)からのパワーハラスメントにより・・・」

といった理由が記載されているケースです。

このような場合、会社側としては退職に関する認識は一致しているが、退職理由については会社が認識しているものと異なることについて従業員に通知しましょう。通知方法はどのような形でも問題ありませんが、後で紛争になった場合に備えて客観的な証拠として残る形で行うことが望ましいです。